2017.10 diary

 


火薬の匂いがする

あなたの手に
にぎられた
誰かほかの
わたし以外の
女の乳房のあたりから
漂うその
けむたい匂いは
くたびれた体を包んで
ひどくわたしを眠たくさせた
きっとあの女のそれは
ちゃんと赤ちゃんを育てることが
できる機能を持っていて
それに嫉妬すらできず
わたしは過去の女
として成り下がるほかなかった

それより
拳銃はどこにあるのか
左手でずっとベッドのシーツの中を
まさぐっていた正午
殺そうと思ったんじゃない
あなたがこれ以上浮気しないように
ちゃんと植物人間にしてあげようと
思っていたんだよ



「友達なんだし

 彼氏がいても関係ないし
 
 たまには連絡してこいよ」



あと何%ぐらいの降水確率があれば
雨が降ってたと思う?
そういう仮定のはなしばかり並べて
きょう晴れているということを
全否定しながら
日々を黒く塗りつぶしていた
そのわりに塗り残しがけっこう残っていて
ちゃんと塗らなきゃダメじゃんって言いながら
あなたは中目黒の駅前で
わたしとさしている傘と
まったく同じ色の絵の具で
左手のくすり指の爪に
ていねいに色を重ねた

子どもだったわたしには
それが何を意味しているのか
よくわからなくて
どういうことだったのか
その意味を聞かなかったことを
今も少し後悔をしている
あと何%ぐらいの会話があれば
ずっと仲良くしていられたと思う?



 「いままでありがとうございました。
  
  お元気で。」



目の前に箱がある
プレゼントみたいな箱だ
けれど何が入っているのか
まったく予想がつかない
いかにもプレゼントらしい箱をしているから
かえってプレゼントじゃないんじゃないか
と思えるほどの様相をしている
正社員として働いてからは
欲しいものはだいたい自分で手に入れていて
あとは家と土地と
時間が欲しいだけになっていた
持ち上げると空気みたいに軽くて
何にも入っていないみたいだった

そういえばもうすぐ誕生日で
それまであなたと付き合ってるか
わからないけれど
それでもたぶん付き合っていると思えるのは
どうしてなんだろうね

理由はとくにないけれど
自分の誕生日を
何だかあなたに教えたくない
プレゼントも欲しくないし
その日にお祝いしてもらっても
どうせ次の日は誕生日じゃなくなっちゃうし
それだったら
人生でいちばん若い
今日現在のわたしのことを
お祝いしてくれても
いいんじゃないかっていう
ちょっと面倒くさいことを考えている

さっきから誕生日を
しつこく聞いてくるから
昨日!
とか
明日!
とか言った時の驚いた顔が
すごく面白かった

気にしなくていいよ
どうせ忘れるんでしょ
誕生日も
わたしのことも
きょうこんなにも
楽しかったことも


 「それで、ほんまのところ誕生日いつなん?」